9.“高齢者の入居を拒まない住宅”に建設補助は必要なのか

「高齢者の入居を拒まない住宅」というと、本業界に長い方は「高優賃」「高円賃」「高専賃」を思い出すかも知れません。現在、ほぼこれに近しい住宅制度が「あんしん住宅制度」です。

前身は国が実施する「民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業」(平成24年度~26年度)で、民間住宅を活用した住宅セーフティネットを構築するためのリフォーム補助事業です。入居対象者は「要配慮者」と定義された、高齢者世帯、障害者等世帯、子育て世帯、その他所得が214,000円を超えない者及び被災者世帯となります。

平成27年度からは「あんしん居住推進事業」として補助事業は継続。併せて、サ高住の登録サイトのように「あんしん住宅情報提供システム」のサイトが公開。現在、約1万件、約17千戸が登録され、ホームページ上で閲覧が可能です。

 

現在、サ高住の入居者層のほとんどが要支援以上の高齢者で占められている事を踏まえると、「あんしん住宅」=「自立高齢者」、「サ高住」=「要援護高齢者」という住み分けができてもよさそうです。実際に、大阪の物件は30㎡を超える広い間取りの物件が多く、明らかに単身ではなく夫婦以上の世帯数を想定した造りです。

但し、登録状況を見ると地域差が激しく、例えば大阪府、静岡県の登録数は1,000戸を超えて突出しているものの、東京や神奈川は僅か100~200戸程度と少なく、本制度がほとんど浸透していない事が分かります(東京は独自に「東京シニア円滑入居賃貸住宅制度」を実施)。

 

ところで、今年の4月から障害者差別解消法が施行されたのはご存知でしょうか。

本法では民間の仲介事業者に対して「不当な差別的取り扱い禁止」が義務規定となり、既に詳細なガイドラインも公開されています。仲介事業者は、“障害”を理由にしなければいくらでも契約拒否の理由は作れるので本制度の実効性には賛否があります。ただ、どれだけの人が本制度の事を知っているでしょうか。もっと、本法を啓蒙するための補助、あるいは本法に規定された「合理的配慮の提供※」に対応できる事業者の支援を進めて欲しいところです。

冒頭の住宅制度のように「入居を拒む/拒まない」という当事者間の賃貸契約上の対応が問われているのに、“建物の建設補助で何とかしよう”というやり方は旧態依然として腑に落ちません。

※例えば、視覚障害者に対して、筆談で丁寧に対応する行為。車椅子の利用者に対して、通行の妨げになるものを定期的に排除する行為、必要に応じて支援者等に連絡を取る等の障害者の生活に配慮する行為